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消化器系薬

消化性潰瘍治療薬のポイント

胃痛や気持ち悪さが続く胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療を受けているor受けたことがある人は少なくないと思います。原因となる精神的ストレス、アルコールの過度な摂取、解熱・鎮痛薬などの薬の副作用などまさに現代病と言っても過言ではありません。

調剤薬局で仕事をしている私にとっては触らない日がない薬であり、最頻出薬でありながら、服薬指導の場面では他の薬の説明に時間を割くあまり、しっかり解説してくれる薬剤師は少ないことが目立ちます。

かなり種類のある薬でありながら、認識は「胃薬」の一言で済まされてしまうことのある薬ですが、実はそれぞれ特徴の持った薬ですので、正しい認識を持って、最適な治療に生かしてほしいです。

このような、あまり目立たない薬でありながら、重要な薬である消化性潰瘍治療薬のポイントを解説していきます!

ZOO

ただの胃薬という名の薬はないんだな。手元にある薬は何かしっかり認識しよう!

消化性潰瘍の病態概要

まずは消化性潰瘍の概要について簡単におさらいしましょう!

消化性潰瘍とは胃や十二指腸の粘膜がえぐり取られた状態のことです。

その粘膜のダメージは個々の背景・要因によって様々で、大事なことは一人ひとりに合った治療法を選択することです。 とはいえ、粘膜がダメージを追う要因は大きく分けて2つありますので、簡単に解説します!

粘膜の防御能力が低下して胃酸に負けてしまうパターン

胃酸の分泌が過多になり、粘膜が負けてしまうパターン

もちろんこの2つのパターンが組み合わさっている場合もあります。

一般的には胃潰瘍の場合が①の胃粘膜防御機能低下がみられ、十二指腸潰瘍の場合が②の胃液分泌亢進が主因であると言われています。

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ストレスが原因の胃潰瘍は「心も胃も」防御能力が低下しているんだな

この消化性潰瘍の薬物治療の大方針としては「強い痛みや症状を抑えて治癒させる期間」ことと「その後の再発を防止させる治療期間」の2段階となります。

薬も防御因子増強薬(胃粘膜の保護をする薬)と攻撃因子抑制薬(胃酸分泌を抑制する薬)の2つに大別されますので、それぞれの特徴や内容を解説していきましょう!

防御因子増強薬(胃粘膜の保護をする薬)

粘膜を守るにはいろいろな方法がありますが、基本的には粘膜の抵抗を強化するか、修復させるのを早めることにより粘膜保護を達成します。現在の薬では5つのメカニズムがあります。それぞれ解説していきます!

①潰瘍病巣部位保護薬

代表薬はスクラルファート(アルサルミン)、アルギン酸ナトリウム(アルロイドG)の2つです。

潰瘍の部位に直接くっつくことによって胃壁をベールのように保護して胃酸から守ってくれます。

そのため飲み方が少し特徴的です。

アルサルミンの効果的な飲み方は、空腹時と就寝前に水と一緒に服用すると最も効果がいいです。

アルロイドGは付着した状態をなるべく保持する必要があるので、服用後5分間くらいは水を飲まないと良いです。また、アルサルミン同様に空腹時と就寝前の服用が効果的です。

見た色の通り、ほのかにメロン味です。飲みにくい場合は冷蔵庫で冷やして飲むと飲みやすくなります。また、水で薄めてしまうと消化管にくっつく能力が低下するので水で薄めないようにしてください。

アルロイドGのさらに有能な作用として止血作用もあるため、胃で出血している場合は重宝します。

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夜中の食道保護にアルロイドGが良く効くから、就寝前の服用はオススメなんだな

②組織修復促進薬

代表薬はマーズレンS配合剤、ポラプレジンク(プロマックD)、アルジオキサ(アランタ、イサロン)です。

病巣部位の肉芽形成(細胞の増殖)を促進させて損傷した組織の治癒を早めます。この組織修復促進作用は後述するレバミピド(ムコスタ)テプレノン(セルベックス)なども保持しています。

マーズレンSは配合成分に水溶性アズレンとL-グルタミンがあるため、粘液分泌促進作用(後述)と抗炎症作用があります。 胃潰瘍の痛みがある状態のときは重宝します。

ポラプレジンク(プロマックD)の特徴的な部分は組織修復促進というよりも亜鉛の充填能力でしょう。

亜鉛欠乏による味覚障害を改善するためにポラプレジンクを用いて亜鉛を補給することができます。なぜかというとポラプレジンク自体に亜鉛が含まれているためです。さらに活性酸素の消去・産生抑制といった能力もあります。

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もはや現場では亜鉛補給がメイン、胃粘膜保護がサブの役割になりつつあるんだな

③粘液分泌促進薬

代表薬はテプレノン(セルベックス)、レバミピド(ムコスタ)です。

粘膜の表面に存在する粘液自体に胃の防御作用があるため、粘液分泌を盛んにして強化しようとするものです。

よくロキソニンなどの痛み止めとセットで処方されることも多いので認知度が高い薬ではないでしょうか。

テプレノンもレバミピドも中心となる作用はこの粘液分泌促進ですが、補助的作用として②~⑤の3つの作用も併せ持つとても有能な薬であるため最も汎用されます。

さらにテプレノン(セルベックス)は脂質過酸化抑制、熱ショックタンパク誘導による細胞保護作用を持ち、レバミピド(ムコスタ)は脂質過酸化抑制、重炭酸イオン分泌増加、炎症性細胞浸潤抑制などの作用もあります。

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とにかく優秀な薬なうえに値段も安いからたくさん使われるんだな。そして副作用も少ない!

④粘膜微小循環改善薬

代表薬はセトラキサート(ノイエル)です。

粘膜は必要とする酸素やエネルギーを血液から補っています。したがって、血液循環を改善することによって粘膜を強化しようとする作用でこの薬が使われます。

⑤プロスタグランジン(細胞保護)作用

先述のセルベックス・ムコスタの項目でロキソニンとよく併用すると書きましたが、ロキソニンに代表される鎮痛薬によって胃粘膜保護の成分(プロスタグランジン)生成がブロックされてしまうことが原因です。

そのためプロスタグランジンの作用によって胃粘膜の防御を増強するために使われる主力がミソプロストール(サイトテック)です。

先述のセルベックス・ムコスタもこのプロスタグランジン作用は補助的作用として持っているのでロキソニンなどの鎮痛薬と併用されます。

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胃痛の原因が「鎮痛薬」であるならばサイトテックが良く効くんだな。

攻撃因子抑制薬(胃酸を抑制する薬)

酸のないところに潰瘍はない」と言われるくらい酸と潰瘍は密接につながっています。

したがって、酸を抑えることが急性期において特に重要になってきます。

そのため、昔から酸を中和する方法が取られてきました。代表的な薬として水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム配合剤(マーロックス)です。

しかし、何といっても酸分泌を抑制するには攻撃因子抑制薬が最も効果的です。

現在使用されている攻撃因子抑制薬はほとんど2種類です。

①H₂受容体拮抗薬

代表薬はファモチジン(ガスター)、ラニチジン(ザンタック)、シメチジン(タガメット)などです。

H₂のHはヒスタミンのことです。体のいたるところで活躍しているヒスタミンですが、胃壁に存在するH₂受容体が刺激されると主に胃液だけが分泌されます。

このH₂受容体拮抗薬の登場は消化器外科医を失業させるのではないかというくらい治療効果を上げることに成功した薬で、ノーベル医学賞に輝いたほどです。

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今では薬局やドラッグストアでも市販薬として存在するんだな

②プロトンポンプ阻害薬

新しい酸分泌抑制作用のメカニズムとしてプロトンポンプというものが証明され、現在はH₂受容体拮抗薬よりも強力に胃酸を抑えるとして、治療薬の主役になりつつあります。

このプロトンポンプというのは、先述のH₂受容体だけにとどまらず、胃内に存在する胃酸を出す受容体を統括している部分と考えればわかりやすいです。

代表薬にランソプラゾール(タケプロン)、オメプラゾール(オメプラール)、ラベプラゾール(パリエット)、エソメプラゾール(ネキシウム)があります。

強力な分だけ副作用などの問題も懸念があり、使用期間が原則6~8週間とされています。

・・・が、実際には消化性潰瘍の再発防止で継続して使用するケースもかなり多いです!(しっかりと主治医と相談してから治療を続けるようにしましょう。)

主な副作用として下痢・便秘などの消化器症状、口が渇く・口内炎・下の炎症・味がおかしいなどの口腔内症状、頭痛・めまいなどの神経症状、倦怠感・かゆみ・湿疹などの肝機能障害があります。

もし長期にわたって使用している状況で気になる場合はぜひ主治医の受診時に「そこそこ長く飲んでいますが、弱めの薬に変えることはできないですか・・・?」などと切り込んでいくことをオススメします!

嫌な顔をする医師はかなり稀なはずです。)

2015年には新しいタイプのプロトンポンプ阻害薬ボノプラザン(タケキャブ)が登場しました。

このボノプラザンの凄いところは酸性下でも安定なため、分泌細胞に長くとどまることができるため攻撃因子抑制薬のなかでも最も長く効果が持続します!

さらに、今までのプロトンポンプ阻害薬は酸による活性化が必要であったのに対し、ボノプラザンは酸による活性化を必要としないので作用発現も早いです!

欠点を強いて言えば、消化性潰瘍治療薬のなかで最も値段が高いくらいでしょうか。。

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タケキャブの登場でピロリ菌除菌も治療効果が高くなったんだな

ピロリ菌除菌については後日、別の記事にて解説しようと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか。

消化性潰瘍はしっかり治療薬を使用すれば確実に寛解します。が、大事なのは再発予防です。

そのため「痛みがなくなったからもう薬は中止しちゃえ」という自己判断が最も危険です。

寛解維持療法に入ったらH₂受容体拮抗薬を減量しながら防御因子増強薬を使用する戦略がスタンダードです。

今回まとめてある薬を参考にして、適切に薬を使用して、消化性潰瘍と向き合っていきましょう!