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消化器系薬

過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎治療薬のポイント

消化器系疾患で最近患者数が増えているのが過敏性腸症候群(IBS)と潰瘍性大腸炎です。

どちらもひどい下痢症状が起きることが共通の症状ですが、病態はそれぞれ特徴があり、治療薬も特徴的です。

ここでは過敏性腸症候群と潰瘍性大腸炎の治療薬のポイントを解説していきます!

過敏性腸症候群治療薬のポイント

過敏性腸症候群の定義は「器質的異常のないが慢性的な便通異常や腹痛がある症状」のことです。

主に若年層に多く、ストレスが原因で起きることが言われています。

治療方法として、多くの治療薬が選択肢にあるのでここで解説していきます。

①メペンゾラート臭化物(トランコロン)

消化管運動亢進抑制作用といい、大腸に作用して大腸の痙攣を抑えます。

注意点として、視調節障害を起こすことがあるので車の運転等、危険を伴う機械の操作は行わないで下さい。

②トリメブチンマレイン酸塩(セレキノン)

消化管機能調整薬であり、胃腸の運動が亢進しているときは胃腸の運動を抑え、胃腸の運動が低下しているときは胃腸の運動を活発にしてくれる使い勝手のいい薬のため、「胃腸の具合が悪い」という主訴に対して「とりあえず」で処方されることの多い薬です。

そのため便秘や下痢を繰り返す過敏性腸症候群とは相性が良く、治療の主軸になりうる薬です。

肝臓で代謝されるため長期使用による肝機能障害などがありますが、特記すべき注意事項の少ない「使い勝手のいい」薬です。

③ポリカルボフィルカルシウム(コロネル・ポリフル)

消化管内の水分保持作用と消化管内容物輸送調整作用があります。と言われてもしっくりこないと思います。

一言でいえばスポンジのような役割です。下痢の時は水分を吸って下痢を減らし、便秘の時は便を柔らかくして、繰り返し起こる腹痛を伴う下痢や便秘を改善します。

使い方のポイントですが、服用後に喉や食道の途中でつかえた場合は膨張して閉塞する可能性があるのでコップ一杯程度の多めの水で服用するようにしましょう。

注意点として、ポリカルボフィルカルシウムを服用中にカルシウムや活性型ビタミンD製剤を含む健康食品は摂らないようにしてください。

なぜなら、活性型ビタミンD製剤は腸管でカルシウムの吸収を促進させ、高カルシウム血症が現れる場合があるので気を付けましょう。

④ラモセトロン(イリボー)

ラモセトロンは繰り返し起こる腹痛を伴う下痢や便秘(過敏性腸症候群)を改善します。

発売当初は男性のみの適応だったのですが、発売後数年して女性への適応も通りました。

実は筆者自身も過敏性腸症候群で苦しんでいた時に使用した薬ですがマジで良く効きます!

突然来る下痢の便意を改善してくれる最強の味方ですが、副作用もそこそこ報告されており、虚血性大腸炎や重篤な便秘の報告が上がっています。

そのため、症状の改善が認められない場合、長期にわたって漫然と服用しないほうがいい薬ですので、なかなか効果を感じられない場合は主治医に相談しましょう。

潰瘍性大腸炎治療薬のポイント

潰瘍性大腸炎は寛解と再発を繰り返す難治性疾患であり、基本的には自己免疫疾患による腸の広範囲の炎症が原因で強い痛みが出現します。

詳しい治療法は多岐に渡るため、ここでは主力として使用される治療薬のポイントを解説していきます。

①サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)

大腸の炎症部位に直接作用して炎症を抑え、下痢、血便、腹痛などの症状を改善します。

注意点として、コップ一杯程度の多めの水とともに噛まずに服用してください。

水分が少ないと結晶尿となり尿閉をきたすことがあるので気をつけてください。

また、尿や皮膚、爪や汗、体液などが黄赤色になることがあります。そのためコンタクトレンズを使用しているひとはコンタクトレンズが黄赤色に着色することがあるのでレンズの着用は避けてください。

②メサラジン(ペンタサ、アサコール)

メサラジンは炎症細胞から放出される物質を抑えることによって下痢、血便、腹痛などの症状を改善します。

ペンタサとアサコールの違いは製剤的特徴によって、アサコールは大腸選択的に作用する、ペンタサは小腸にも作用する違いがあります。

どちらにせよ、腸にて溶解される製剤特徴があるので噛まずに服用することが重要です。

最後に、潰瘍性大腸炎は薬物治療だけでなく、全身にいろいろな合併症を引き起こすので、心身の安静を心掛け、高タンパク、高カロリー、ビタミン豊富な食事を取るなどの生活習慣の改善も必須となります。