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脳・神経系

認知症治療薬のポイント

人生100年時代となり、加齢というのは避けて通れない道となっています。

その加齢と相関性の最もある病気の1つとして認知症が挙げられます。

認知症にもいくつが分類がありますが、割合的には70%を占め、最も多いアルツハイマー型認知症。

アルツハイマー型は大脳皮質の変性によって生じるものと考えられており、進行すると大脳皮質の萎縮がみられ、特に前頭葉に強く見られます。

進行性の病気であり、段階では完治させる治療薬がないので、治療のポイントは早期発見・早期治療とされています。

現在使用されている認知症治療薬の効果はかなり限定的であり、「進行を遅らせる」というよりも症状や行動の問題点を改善する効果です。

認知症進行の段階別に使うべき薬が違うので、ここでは認知症治療薬を使用する上でのポイントを解説していきます!

コリンエステラーゼ阻害薬

認知症治療薬で第一選択とされるのがこのコリンエステラーゼ阻害薬です。

認知症では脳内のコリン作動性神経系の障害による症状が目立つことから、治療薬として登場したのがアセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳内のアセチルコリン量を増やして、少しでも脳内のコリン作動性神経系を賦活する作用機序をもつドネペジル(アリセプト)が登場しました。

基本的な使い方は徐々に用量を増やしていき、5mg~10mgで維持していきます。

このドネペジルの発売から12年後にガランタミン(レミニール)とパッチ剤であるリバスチグミン(イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ)が登場しました。

飲み込みがうまく出来ない高齢者に1日1回張り替えるだけで良い製剤は介護者の負担を軽減してくれます。

ガランタミンもリバスチグミンも使い方はドネペジル同様、低用量からスタートして維持量まで数週間かけて増量していきます。

軽度認知症であればこれら3種のコリンエステラーゼ阻害薬のどれかを使用して、効果不十分の場合は他のコリンエステラーゼ阻害薬に変更する方針が基本です。

注意点として、アリセプトもレミニールも口の中で溶ける製剤ですが、口腔粘膜からは吸収されないので、唾液または水で必ず飲みこむようにしてください。

副作用も主に悪心・嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器症状が多いので、消化器症状を注意しながら増量するので、診察時にはかならず便の調子がどうか医師に伝えましょう。

認知症の方が使う薬なので、飲んだことを忘れて何度も服用してしまうケースも実際にありました。

過量服用の症状としては吐き気や発汗、よだれが流れるように出る、徐脈、呼吸抑制、虚脱およびけいれんなどの症状がでることがあります。

アトロピンを解毒剤として投与することが初期の処置で求められるので、上記の症状が見られた場合はすぐに救急車を呼ぶようにしてください。

NMDA受容体拮抗薬

前述のガランタミンとリバスチグミンとほぼ同時期に発売されたのが、作用機序がことなるメマンチン(メマリー)です。

NMDAなど小難しい分類区分ですが、簡単に説明すれば、神経伝達系の過剰な活性化を抑えて症状の周辺問題を解決する手助けを行う薬です。

使い方はコリンエステラーゼ阻害薬と同様に、低用量(5mg)から開始して、1週間ごとに増量し、最大20mgまで増量することのできる薬です。

実際には認知症の症状が進行して、中程度~重度になった際に、コリンエステラーゼ阻害薬と併用して使用するケースが多いです。

メマンチンの注意点として、めまい、肝機能障害が副作用に挙げられます。特に投与初期はめまいが出現する可能性が高いので気をつけてください。

過量服用の症状としては、不穏、幻視、けいれん、傾眠、昏迷・昏睡が挙げられます。

これらの症状があった場合の処置として、尿を酸性化することにより排泄が促進しますが、家庭で出来ることではないので、なるべく早く早い段階で救急車を呼びましょう。