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循環器系薬

循環器系で使用する利尿薬のポイント

利尿薬と聞くと皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか。

「おしっこが出ない人が飲む薬」とか「水太りの人が飲む薬」などの印象でしょうか。

実は循環器系疾患と切っても切れない関係にあるのがこの利尿薬です。

心不全の治療にも使用しますし、高血圧の治療にも使用します。

疾患から勉強すると体系的に捉えていくことが難しいのがこの利尿薬なので、薬の観点から整理していきましょう!

利尿薬の種類

現在使用されている利尿薬の分類は以下の5種類です。

()は製品名です。

  • ①サイアザイド系および類似利尿薬:トリクロルメチアジド(フルイトラン)、ヒドロクロロチアジド
  • ②ループ系:フロセミド(ラシックス)、アゾセミド(ダイアート)
  • ③カリウム保持性:スピロノラクトン(アルダクトンA)
  • ④炭酸脱水酵素酵素抑制薬:アセタゾラミド(ダイアモックス)
  • ⑤バソプレシン2受容体拮抗薬:トルバブタン(サムスカ)

全てに共通する作用として、尿を出してむくみを取る作用があります。

むくみとは、細胞内外に過剰となった水分が原因なので、水分を排泄すれば改善します。

また、体内の水分量の減少が症状を悪化させる原因となるため、糖尿病や痛風があるケースではこれら利尿薬を使わないほうがいい場合が多いです。(例外はあります)

それでは各分類の解説へといきましょう!

サイアザイド系利尿薬

昔からある利尿薬のため、経験数が豊富で使い方がわかりやすい分類です。

安定した降圧効果を発揮するので、最近では降圧薬合剤に含まれることが目立ちます!(テルチア配合錠など)

飲んでいる薬の説明文に成分名は入っていますので、一度目を通して確認してみてください。

利尿効果は他の分類に比べれば弱いものの、効果発現がゆっくりなこと、長時間持続しないため安定した治療効果が見込めます。

効果発現が1~3時間後で、最大効果時間は4~6時間です。

アルコールとの併用によって薬の作用が強くなってしまうので気をつけてください。

薬の効き方により、体内からナトリウムやカリウムが排泄されるので低Na血症や低K血症が重大な副作用として報告されています。力が入らない、筋肉が痛い、けいれん、動悸を感じたら中止してください。

ループ系利尿薬

最も使われている利尿薬と(個人的には)思っている分類です。

利尿効果は利尿薬のなかでは最強で、心不全の治療の主軸になる薬です。反対に高圧作用は弱いです。

ちなみに心不全とは心臓のポンプ機能が低下して全身の臓器に十分量の血液を送ることができない状態を表す名称です。

利尿薬を投与することによって体内の余分な水分を排泄し、心臓への負担をなるべく減らすことによってポンプ機能を助ける目的があります。さらに、ポンプ機能が不全のため全身に生じてしまった浮腫(むくみ)を取ることも行ってくれます。

作用の効果発現が早いものから作用時間が長いものまで幅広く薬の種類のあるループ系で、服用後数時間は頻尿となりやすいものです。

特に夕食後や寝る前に服用すると夜間頻尿の原因となるので、1日2回服用の場合は朝、昼食後に服用するパターンが多いです。

気を付けたい副作用としては脱水作用、いわゆる口喝、脱力感、倦怠感などの自覚症状があればしっかり水分を補給するように。

他にも気を付けたい副作用として、前述のサイアザイド系同様、低K血症です。

また、強力な利尿作用を利用して、尿管に結石がある場合、結石を排出促進のためにループ系利尿薬を使うこともあります。

カリウム保持性利尿薬

前述2分類の利尿薬の副作用で低K血症が問題となっていました。

特に心不全で利尿薬をもっと投与したいが、低K血症が懸念材料で増量できない事態もありました。

そこで開発されたのが、体内のKを保持する作用を持たせた利尿薬です。

よく使われる薬としてスピロノラクトン(アルダクトンA)です。

利尿効果は弱いですが、ループ系利尿薬と併せることによって、お互いの弱点を補いながら効果を増強することができる薬です。

作用発現まで8~24時間を必要とするので、服用を開始してから効果が期待できるまで2~3日間かかります

作用の経緯でアルドステロンという男性ホルモンを抑えてしまうので、副作用として女性化乳房といい乳房が大きくなること、女性の場合は乳房痛や多毛が見られることがあるので気をつけてください。

気を付けたい併用薬として漢方薬の甘草を含むものです。これは甘草によりKの腎排泄が促進されるため、甘草の副作用である低K血症の出現が起こる確率があがります。こむら返り時に使用するツムラ68番芍薬甘草湯などを持っている方は気をつけてください!

炭酸脱水素酵素抑制薬

この分類の薬は、体内で炭酸を作る酵素の働きを抑えて、Naを水分と共に尿として出してくれます。

主に使用される名称はアセタゾラミド(ダイアモックス)です。

利尿薬の主役として使うよりも、この「炭酸を作る酵素の働きを抑える」作用が色々と活躍します。

緑内障の原因となる眼房水の生成はこの炭酸を作る酵素が関係するので、投与することにより眼圧を下げたり、脳の炭酸ガス濃度を増やして異常な興奮を抑えててんかんの発作を抑えたり、尿の量を増やし内耳のリンパ液を排泄してメニエール病による眩暈をかいぜんしたり、水素イオンを増やして呼吸中枢を刺激して喚起を改善することにより睡眠時の無呼吸を改善したりと、幅広く活躍する薬です!

注意点として、ビタミンCを大量に併用しないようにしましょう。大量のビタミンC服用後は、その代謝物が腎・尿路結石を引き起こしやすくするので気をつけてください。

バソプレシン2受容体拮抗薬

最後はトルバブタン(サムスカ)という最も最新の薬です。

バソプレシンという利尿を抑えるホルモンを抑制することによってバンバン水を排泄します

イオンの再吸収もほとんど行わないので、上記の利尿薬で効果が見込めない方のみ使用する薬です。

危険な脱水状態になりやすいので、専門医の下でしっかり治療しましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

利尿薬は心臓にも血圧にも使う薬なので、活躍の場面が多いです。

使用する際はしっかりと認識して、正しく使ってください!